数々の受賞を引っ提げ、28人抜きで真打ちに。落語家、古今亭文菊(41)は端正な口跡で巧みに江戸の情景や女性の心を紡ぐ。だけど、「すごく、課題の多い人生でした」。衝撃の告白を、穏やかに始めた。
――5月から落語の配信をしています。
月に2回「文菊のへや」って銘打って、千円で、落語一席とよもやま話を、テーマを決めて質問を受けたりして。(コロナ禍で)仕事が3分の1ですから、何もしないよりはいいって気持ちと、配信してくれる人に熱意があって。意外に地方のかたが配信を待ってたりすると気がつきました。あと、とりとめのないことを話してるのもいいっていう意見があって、それなら続けてみましょうってんで。
――マクラの自信につながるのでは。
ライブでやったらあんなにぐだぐだしゃべってられないですね。一瞬一瞬で人の気持ちが気になりますし、聞いてる方も間が持たない。それぐらい緩やかですんで。その分、好きなことを、好きな間で、正直に言えてると思いますね。
――高座では見えない自分が出ている?
それは大いにあると思いますね。自分の考えを高座で朗々としゃべるってことは、まずないですからね。
――菊六だった二つ目時代に比べると、素直に言うようになってきたのでは。
ああ、そうそうそう。もうね、その辺を語り出すと……。フッフフ。要は、落語って何なのかっていう問いみたいなもんで。やっぱり人生っていうか、成長というか、時には後退もあるでしょうけど、つまり生きようですよね、それに尽きるということで。
私は子供の頃から大学卒業して入門するまで、糸がこんがらがりすぎてたんですよ。落語っていうのは、そのこんがらがった糸を地道にほどいていくことを見せるしかないような気がするんですよね。
――「ほどく」…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル